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2014年05月01日

「隊長 いしゅび摘みへ行く」の巻

隊長鼎、1週間ほど前になりますが「いしゅび摘み」へ行ってきました。


せっかくのお休みだったのですが、峠では霧が立ち込め、小雨も振り、少し肌寒い天気…




「イシュビ」とは“野イチゴ”のこと。
隊長が小さい頃は、銀玉鉄砲片手に遊びの合間をぬって、友達と競って食べていました。
そんな経験のあるシマッチュ!けっこういるのではないでしょうか?

いますよね?。。。


子どものころは、野イチゴを摘みに行くと、ハブに気をつけなさい!と良く注意されたものです。
実際、この時期からハブも活動をはじめ、イチゴに誘われた小動物を狙って野イチゴ近くにいるようですので、
イシュビ摘みには細心の注意を払ってくださいね。





こちらの大きな花は、「リュウキュウバライチゴ」の花。




「リュウキュウバライチゴ」の実。
リュウキュウバライチゴの時期は過ぎていたのか、思っていたほど収穫ならず…残念。






こちらは、「ホウロクイチゴ」の花。花よりも葉っぱのインパクトが強いです。




「ホウロクイチゴ」の実。
リュウキュウバライチゴに比べると、粒が大きく、色もピンク?オレンジに近いかな?






雨に誘われ現れた、全長15センチの巨大ナメクジも!!
晴天の時とは、一味違う生物の観察もできました!






こちらは、クロウサギの糞。
クロウサギも野イチゴを食べに出てきているのでしょうか?






さて、本日の成果です。
黄色いイチゴは「リュウキュウイチゴ」の実です。

オレンジ色のホウロクイチゴはこれから増えていくと思われます。



そして,今回摘んだイシュビで作ったスイーツ!
スムージー!!!

リュウキュウバライチゴは色々なスイーツに展開できそうですね。





***

「いしゅび摘み」
小さいけれど、シマの四季の移ろいをしっかり感じさせてくれる山の楽しみ方のひとつですね。
この時期のシマでは、桑の実も色づく頃。
野山の恵みを口いっぱいに感じられる季節です。

もうすぐ長雨がやってきます。
奄美に訪れる春を感じるわずかな期間。
童心にかえってイシュビを味わってみてはいかがですか?

くれぐれもハブには注意してくださいね。
(隊長からのお願いです)





瀬戸内町・古仁屋

S.B.I 隊長鼎
2014.5.1
  


Posted by S.B.I at 13:38Comments(0)奄美大島たべもの

2014年03月27日

SBI講座『野鳥のお話し』『バードセーバー作り』

平成26年3月15日(土)、16日(日) に
平成25年度 瀬戸内町文化遺産活用実行委員会講座 が行われました。

3月15日(土)は、「野鳥のお話」を聞いた後に「バードセーバー作り」をしました。


講師は、奄美野鳥の会の会員の「清正 斉」先生
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今回の講座では主に、「奄美大島における鳥類の窓ガラスへの衝突事故」について、話してもらいました。




まず、最初に、
「窓ガラスへの衝突によって全世界で毎年どれくらいの鳥が死んでいるか?」の質問。
①数千万 ②数億 ③数十億 ④数百億
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答えは、③数十億だそうです!
とてつもない数字でビックリですね。




次に、
「奄美大島では、窓ガラスへの衝突によって毎年どれぐらいの鳥が死んでいるか?」という質問。
①数十 ②数百 ③数千 ④数万
答えは、調べた人がいないのでわからないが、数百から数千羽死んでいるのでは、という事でした。


奄美大島では、2006年4月~2012年3月までに死傷鳥類の情報が329件寄せられたそうです。
死傷の原因別にみると
 ①不明 38.9% 
 ②交通事故20.1% 
 ③窓ガラスへの衝突 19.8% (63件)   なんだそうですよ。

死傷原因が分かっているケースに「窓ガラスへの衝突事故」がありますね。
衝突事故は観光施設、公共施設、学校など、比較的「窓ガラスが多い建物」で多く起こるようです。
つまり、窓ガラスの多い建物や場所で適切な対策ができれば,
大部分の鳥の衝突事故を防ぐことができるということ!
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衝突事故の対策としては…
 窓ガラスを傾けて設置する/ 窓ガラスの外部に構造物を設ける…格子・パネル・日よけ/
 ガラスそのものを変える⇒紫外線反射・すりガラス・模様など/
 ガラスを何かで覆う・貼る⇒防鳥ネット・フィルム・バードセーバーなど
海外の対策事例を中心に紹介されていました。


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フムフム。皆さん熱心にメモっていますね。




この対策の中で、私たちが取り組みやすい鳥の衝突事故防止対策は一体何でしょうか?
・・・・・

それは「バードセーバー」を作ること!
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「バードセーバー」とは、鳥に窓ガラスの存在を知ってもらうシール。
猛禽類(鷲や鷹、梟)のシルエットがよく用いられるようです。
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このシールを窓ガラスに貼ることで、
「ここには怖い鳥がいるよ~近寄らないほうがいいよ~」と野鳥に教え、窓ガラスに近寄らせないという仕組み。




先生のお話が終わると早速、バードセーバー作りに取り掛かりました。
子どもも大人も思い思いに色を塗っていきます。
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途中、先生へ質問をする子の姿も!
「奄美にオオタカはいますか?」
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未来の鳥博士ですね。




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塗った後、切るのが意外と難しい。
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みんな真剣。
紙を切っている最中は無口になっていましたよ。
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一番乗り!
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上手に塗れましたね。
続けて2枚目を塗ります。
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こちらも二枚目突入組。
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みなさんがバードセーバー作りをしている最中も、先生のお話は続きます。
ぶつかった鳥の保護法を教えていただきました。
・まずは、野生生物保護センターや奄美動物病院に連絡する。
・ダンボールに入れてふたを閉めて静かにしておく。
・穴を開けたり、水をあげなくていい。
・人間が近くでウロウロしているとストレスになる。

※ヨシゴイやサギなどの大型の鳥には目をねらってくるので、攻撃されないように気をつける。
※脳しんとうを起こしているだけであれば、1時間から2時間すれば離しても大丈夫,
とのことでした。



続いて、鳥の鳴き声を聞かせてもらいました。
先生が持っている白いリーダーから、鳥の声が聞こえてきます。
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「キュルルルルル~」の鳴き声に、子ども達も、「アカショウビン!!」と、すぐ反応してまいした。
また、「ツキヒホシホイホイホイ」と聞こえる「サンコウチョウ」を知っている子どももいました。
「ポーポーペポー」と鳴く「ズアカアオバト」、街なかでも見ることができ、「尺八鳥」とも呼ばれています。
「ウッウッ」と牛のように鳴くハトは、「カラスバト」か「ウシバト」かどっちだったかなぁと思っていたら、
「カラスバト」の事を方言で呼んだのが「ウシバト」でした。




バードセーバーを作った後は、奄美の野鳥や昆虫のぬり絵を楽しみました。
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そして完成したバードセーバー
色とりどりですね!
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中にはルリカケスや
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アカショウビンの姿も。
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最後にみんなで記念撮影。
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今回みなさんに作ってもらったバードセーバーは、図書館・郷土館の窓へ貼ることになりました!


今回の講座では野鳥のお話しや鳥の衝突事故、そしてバードセーバー作りを通して、
奄美の野生生物の保護について学ぶ機会となりました。

清正先生、ありがとうございました。



2014.3.23 
調査員 NORI


  


Posted by S.B.I at 09:30Comments(0)奄美大島自然講座

2014年03月21日

ザトウクジラ最新情報報告講演会!緊急開催です!!

平成26年3月23日(日) 午後5時  から
瀬戸内町立図書館・郷土館 2階視聴覚室  にて、


           平成25年度 瀬戸内町文化遺産活用実行委員会講座
「奄美と沖縄の海より ザトウクジラ最新照合結果報告」
               ~ 奄美のうれしいプレッシャーに こたえて~


を開催いたします。





講師は、イルカ・クジラ教室でもお世話になった、
奄美海洋生物研究会 興克樹 先生です。




平成26年度のクジラ調査も終盤を迎えていますが、今季も多くの新情報や新発見がありました。
その最新情報を、分かりやすく教えてくれます。

入場無料!!

素朴な、疑問、質問も オッケー ですので、
ぜひ、瀬戸内町立図書館・郷土館にお越しください!!



お知らせ
S.B.I  


2014年03月20日

SBI講座『リュウキュウ藍染め体験』(しぼり染め)

2014年2月22日(土)、23日(日)に
平成25年度瀬戸内町文化遺産活用実行委員会講座が行われました。

1日目は「型染め」 → SBI講座「リュウキュウ藍染め体験」(型染め)

2日目となる2月23日(日)は、
「しぼり染め」と「型染め」によって模様をつけたハンカチをリュウキュウ藍で染色しました。



***

この日の会場は瀬戸内町・嘉徳集落にある 藍染め「よしかわ工房」 さん。

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講師は 吉川好弘先生。
約30年もの間、藍染めに携わってきた職人さんです。
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まずはリュウキュウ藍の説明。
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リュウキュウ藍はキツネノゴマ科イセハナビ属の多年草。
(本土の藍はタデ科なので、違う種類なんですよ)
リュウキュウ藍は花が咲かないので、「さし木」という方法で増やしていくそうです。




これが【リュウキュウアイ】
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生育の北限は北緯30度。
光がまばらにこぼれる半日蔭を好み、山の中の窪地で良く生育するそうです。
奄美では越冬するそうですが、さすがに冬場は葉が小さくなるそう。
現在、よしかわ工房さんでは畑で栽培された藍を使っているそうです。




続いて、藍の染料の作り方について。
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藍染めで用いる藍の染料は、微生物の発酵により生み出されます。
収穫した生葉を水につけ不純物を取り去ったあと消石灰を入れ撹拌します。
すると水分と藍の染料が分離し、染料が泥状に沈殿します。
ここまでが1次発酵。

2次発酵では泥状の藍の染料を染料タンクに取り出し、微生物の餌となる水あめ、焼酎を入れ発酵を促します。
500ℓ分の染料タンク1缶分を作るのに、藍の染料100kg、水あめ1kg、焼酎1升が必要なんだとか!
そして、碧(みどり)色の液になるまでじっくり発酵させるそうです。

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藍の染料作りは6月中旬頃に始めるそうですよ。




リュウキュウ藍と藍の染料について学んだ後は、しぼり染めについて奥さまからの説明。
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タオルを使って、模様の種類や模様ごとの絞り方を教えていただきました。
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【しぼり染めの工程】は
 ①模様を考え、模様に合わせて布を紐で縛る。または布を折った後、紐で縛る
 ②染色(染色3分、酸化3分を1セット、合計染色回数4回)
 ③しぼり解き(しぼりは染料が酸化した後に布の紐を解いていく)
 ④水洗い(余分な染料を落とす)
 ⑤乾燥


しぼり染めは布を紐で縛り、施文する模様染め。
染色後、紐で縛った部分が白く残り模様となります。
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ハンカチをしぼる紐は白とピンクの2色。
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紐の色を変えるのは、「しぼり解き」の順番をわかりやすくするためだそう。
染めの回数を追うごとにしぼりを解くと、模様に水色から白へ色の変化が生まれます。




真っ白のハンカチを前に、出来上がりの模様を想像しながら縛っていきます。
どんな模様にするかワクワクドキドキ、楽しみですね。
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ハンカチをしぼり終えたら、藍染め開始です。
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藍の染料タンク前に並んで順番待ち。




ハンカチには長い紐をつけます。
これは染色しやすく、またハンカチを引き出しやすくする工夫です。
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1回目の染色。
まず、染色液にハンカチをひたします。
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染色時間は3分間。
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ハンカチが染色液を吸うまで少し時間がかかるので、二股の棒を使ってハンカチを沈めていきます。
3分たったらタンクからハンカチを引き上げ、余分な染色液をしぼります。




タンクから取り出したハンカチを台の上へ。015




ハンカチのしわをのばし、広げていきます。
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藍の染料は空気に触れることで酸化します。
すると、碧色から藍色へ色が変化し、藍本来の色(藍色)に定着するそうです。
染色時間や回数は布の種類や薄さで判断します。
もちろん、藍の染料は生き物。
藍の状態によっても染色時間や回数を変えるそうですよ。




2回目の染色の様子。 
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「どんなかな~」
思わず覗き込んじゃいますね。
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3回目の染色後。
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お父さんにハンカチを引き出してもらって・・・




自分の、と思われるハンカチをしぼる子供たち。
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子供たちは顔や服、靴に藍の染料を飛ばしつつ勢いよくハンカチをしぼっていました。




こちらは3回目の酸化後、しぼり解きをしています。
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2回目の酸化後なら、やや濃い水色
3回目の酸化後なら、水色
4回目の酸化後なら、白
という風に、自分の出したい模様に応じて、酸化後にしぼりを解いていきます。




最後の染色。
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ぎゅ~っと絞って。
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顔に染料がはねちゃいました。
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酸化させた後は、最後のしぼりを解いていきます。
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そして、水洗い。
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巨大バスタブでじゃぶじゃぶ洗います。



余分な染料を落としていきます。
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空を走る飛行機雲のようですね。
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水気を切った後は脱水。
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中にはこんなものを染色していた人が。
これは芭蕉糸なんだとか!
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なんだか髪の毛のようですね・・・




脱水が終わると、外の物干し竿で自然乾燥。
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風にはためく皆さんの作品。
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しぼり染めと型染めのハンカチです。
それぞれに趣があって見ているだけでも、楽しいですね。




ハンカチが乾くまで、ちびっこたちは広場でおにごっこに興じていました。
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自然乾燥後。
作品を見せ合っている方たちもいましたよ。
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よしかわ工房さんの藍の色は、とても深い堅牢な藍色。
しぼりの数やしぼる範囲、しぼり解きの回数を変えることで、作り出す模様は無限に広がります。

しぼりを解き、水洗いして初めて自分のハンカチの模様がわかる。
どんな模様ができるのかわからない、そんなワクワク感が「しぼり染め」の魅力だと感じました。

「また、染めたいね~」
そんな声があちこちから聞こえてきました。




最後に皆さんが作った作品を手に、記念撮影!
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素敵な作品ができましたね。             



***

今回の講座では
1日目に「型染め」
2日目に「しぼり染め」とリュウキュウ藍による染色 を行いました。


かつて瀬戸内町の「山郷(ヤマグン)」と呼ばれる地域では、
明治末から大正初期にかけてリュウキュウ藍による染料作りが行われていたそうです。

しかし、現在では自生の藍から作られる藍の染料および藍染めは、嘉徳集落のみで行われています。

今では大変貴重となったリュウキュウ藍による染色体験。

今回の講座ではリュウキュウ藍の特性や、藍の染料を作り出すまでの工程を学ぶことができました。
また、リュウキュウ藍による染色体験を通して、瀬戸内町ならではの染色文化に触れる機会となりました。


ご指導いただいた大内先生、よしかわ工房の吉川さんご夫婦。
貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。



参考文献
「瀬戸内町の文化財をたずねて」(改訂版)



2014.3.17
SBI調査員  鼎さつき



  


Posted by S.B.I at 08:00Comments(0)奄美大島自然民俗講座嘉徳集落

2014年03月18日

SBI講座「リュウキュウ藍染め体験」(型染め)

平成26年2月22日(土)、23日(日)に
平成25年度瀬戸内町文化遺産活用実行委員会講座が行われました。

今回は奄美の染色技法のひとつ、リュウキュウ藍を用いた「藍染め」を学び楽しむ講座。
そして今回は「型染め」「しぼり染め」の二つの染色方法にも挑戦しました。

***
平成26年2月22日(土)、
この日は「型染め」についての講座でした。


講師は 大内 一恵 先生

ご出身は大阪府で、小さい頃は切り絵が大好きだったそうです。
染色に興味を持ち、奄美に来島。
そして、独学で「型染め」の技法を学んだそうです。


「型染め」は白生地の上に型紙を置き、その上から防染糊(ぼうせんのり)をへらで置き、
乾いてから染色する方法です。


これは先生の作品

型紙の彫りの細かさ・美しさに驚きますね。



これは嘉徳集落・よしかわ工房さんで染めた先生の作品。

よしかわ工房さんは今回型染めの染色でお世話になる工房さんです。



この靴下の文様も型染めで作られたそうです。

同じ型染めですが、こちらの作品は沖縄の紅型染と同じ技法を使っているとのことでした。



型染めの工程は以下の通り。
①下絵を描く
②型紙に下絵を写してカッターで切る
③型紙に紗(細かい網)を貼る
④型紙に糊を置く
⑤乾燥
⑥染色

この日の講座では、①~⑤までの工程を行いました。



先生から型染めの工程の他、型紙作りのポイントも教えていただきました。
型紙作りでの目や口の表現について。

なんだか、難しい・・・?と思いましたが、
先生が下絵を書いた後に型に合う絵に調整してくださる。と聞いてほっと一安心でした。



先生の説明が終わると、下絵描き。

完成図を想像し、カッターで切る部分、残す部分を決めながらの下絵描きです。
皆さん、10×10の下絵を前に、真剣に悩んでいます(笑)。



下絵を家で書いて持参した子も。

一番乗りで型紙へ下絵を写していました。



切り絵の本を参考にするのもいいですね。




みなさん、素敵なデザイン!








下絵が完成すると、今度は型紙作りです。

下絵を型紙に写し、カッターで切っていきます。



型紙は「洋型紙」という型紙専用の紙。

下絵が細かくなるほどカーブや角の切り方に技術が伴います。



皆さん、切る作業に集中するあまり、だんだん口数も少なくなってきていました。





カッター初挑戦!

先生に見守られながら、少しずつ慎重に・・・



できた!完成!

最後まで切ることができました◎



皆さんの型紙













なんとか型紙作りを終えると、次は「紗張り(しゃばり)」

「紗」は型紙の補強用の布。
これを型紙に貼り付けていきます。



型紙には糊がついており、アイロンをあてると型紙と紗がくっつきます。

黄色い「離ケイ紙」と呼ばれる耐熱紙をしいた上から、5秒ほどさっとアイロンをあてます。




その後、余分な紗を切り終えると、型紙は完成です。
型紙には防水処理がなされているので、半永久的に使うことができるそうですよ。



次は、いよいよ糊貼り。

真っ白のハンカチを前に、どこに模様を入れようか考えます。



使われる糊は餅米、糠、塩でできているそう。

粘り気のとても強い糊です。
固くなってきたら消石灰を入れて混ぜ、糊の状態を調節するそうです。
(今回は藍染めへの影響を考え、消石灰を入れていないそうです)



まずは多めに糊を取り、型紙の上に糊をのせます。




【糊置きの工程】

①切った文様部分を埋めるよう、まんべんなく糊をひろげていきます。
②型紙に糊が均一にのるよう、余分な糊をヘラで取っていきます。
③型紙の切った部分を糊で埋めるくらいの薄さ、に糊を残します。
④糊置きが終わると、ハンカチから型紙をそっとはずします。


糊を取りすぎると、染色時に色が染み込みやすくなるとのこと。
薄すぎず、厚すぎず・・・
この塩梅が難しかったです。



型紙は続けて糊置きせず、その都度水洗いし型紙についた糊を落とします。

そうすることで、型紙通りの糊置きができ、美しく染色できるそうです。



糊置きがうまくできなかった部分は、後から妻楊枝などで修正も可能なようですよ。





さぁ。糊置きを始めましょう。

型紙の枠外に糊がはみでないように、慎重に慎重に。




みなさん、黙々と糊置きに熱中しています。



糊置きが終わると、乾燥です。

この作業は今の季節だと数時間干すだけ。
先生によると、糊置きの時期は冬場がベストとのこと。
湿気の多い時期だと、ドライヤーを使って乾燥させても、
すぐに空気中の湿度によって糊がふやけてしまうそう。



続いて、翌日の染色工程について説明がありました。

型染めの染色時のポイントは、「急がない、ゆすらない、リラックス」
ゆっくり染色液に布をひたし、染色・・・そして、ゆっくりハンカチを引き上げる。
これは、
糊が水分を吸うと膨らむため、染色液の中でゆすったりすると糊が布からはがれやすくなるからなんだとか。
美しい型染めの作品作りは、染色の時間をゆっくり楽しみながら作られるんですね。




***

翌日の2月23日(日)
この日の会場は瀬戸内町嘉徳集落にある「よしかわ工房」さん。




瀬戸内町でリュウキュウ藍による藍染め体験ができる工房です。




これは藍の染料タンク!
「藍の華」がふわふわ浮いていました。

思わず覗き込んでしまいます。




さぁ、いよいよ染色開始です!

「急がない、ゆすらない、リラックス」を合言葉に
ハンカチをゆっくりと藍の染料へひたしていきます。



ハンカチを持つ指先まで染料につかったところでストップ。

ここで、昨日先生がお話しした「リラックス」の意味が判明。
ハンカチの両端をピーンと張りながら高さをキープするので、
思わず肩に力が入ってしまうのです。
リラックスしながらの2分間は、けっこう長かったです。



そして、ゆっくりハンカチを引き上げていきます。

糊は染料を含み、はがれやすくなっているのでハンカチがたわまないよう
ゆすらないよう気をつけます。



引き上げると、染料の表面ぎりぎりの高さでハンカチを2分間キープします。

「藍の色の変化を楽しんでください」
先生の一言に、みなさんじ~っと色が変わっていく様を観察。



碧色から藍色へ。
藍の染料は空気に触れると藍の成分が酸化します。
すると碧色から藍色へと徐々に色が変化していくそうです。


そして、もう一度ハンカチを染料の中へ。




2分間、またじっと待ちます。




ハンカチを引き上げると、最後の酸化。

物干し竿に2分間、ハンカチを干します。



これが終わると、糊落とし。

ハンカチについた糊と余分な染料を落としていきます。



糊が洗い流されると、染め抜いた模様がでてきましたね。





水洗い後は、乾燥。

完全に乾くと糊を置いた部分の白色がよりはっきりでてくるとのこと。



1回目の染色後の色




そして、2回目の染色、糊落としまで終わった後の色

碧色から藍色へ
色の変化がはっきりわかりますね。




乾燥後。

愛らしい模様に、ほっと和みますね。
藍の池に浮かぶ蓮の花。美しい!


「島ぬ宝」!





さっそく、型染めのハンカチをバンダナにしている子供も。





1日目の型紙作りから始まった、「型染め」。
細かい文様を自分の手で切り出し、
糊を置き、色を染める。

ハンカチを洗い、模様が浮かび上がるたびに、
思わずにっこり、みなさんの笑顔が増えていきました。


今回の講座ではリュウキュウ藍による藍染めに「型染め」の技法を取り入れ、
新たな藍染めの魅力に触れることができました。

じっくり時間をかけて自分で作った藍染めのハンカチ。
講座に参加された皆さんにとって、きっとお気に入りの一枚になったのではないでしょうか。



大内先生、よしかわ工房の吉川さんご夫婦
貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。




2014.3.9
SBI調査員  鼎さつき


  


Posted by S.B.I at 11:44Comments(0)奄美大島自然民俗産業講座嘉徳集落

2014年03月10日

SBI講座『野鳥のお話』『バードセーバー』と『諸鈍探鳥会』

今年度実施してきたSBI講座も最後の講座を迎えることになりました。

最後の講座は、
『野鳥のお話』と『バードセーバー作り』 
『諸鈍探鳥会』

講座の詳しい内容は以下の通りです。




3月15日(土)14:00~
『野鳥のお話』 と 『バードセーバー作り』 を行います。
講師は、奄美野鳥の会の清正(せいしょう)先生をお迎えします。

・日   時:平成26年 3月15日(土) 午後14:00~16:00まで

・集合場所:瀬戸内町立図書館・郷土館2F視聴覚室

・費   用:参加費無料

・持 参 品:筆記用具、はさみ、クレヨン、絵の具、新聞紙 等


子供たちの自由な発想と豊かな色彩をいかしたバードセーバー作りを楽しんでくださいね。



*****






3月16日(日)
自然観察会 『諸鈍の探鳥会』 を実施します。

加計呂麻島の諸鈍集落は、水田の多い集落。
ここは毎年冬鳥や旅鳥が多く立ち寄る場所だそうです。
諸鈍探鳥会を通じて、奄美の自然や野生生物に触れてみてはいかがですか?


・日     時:平成26年 3月16日(日) 8:00~12:30まで

・活 動 場 所:諸鈍集落

・集合・解散場所:せとうち海の駅 
※フェリーに乗りますので、集合・解散場所をお間違えのないようお願い致します。

・費     用:実費負担・・・フェリー代(こども往復料金:260円、大人往復料金520円)
                                          ※参加者各自でご購入して下さい。

・申 込 締 切:平成26年 3月13日(木)までお願い致します。

・日 程 (予定):08:00~12:30                                                             
        ※ 8:10発のフェリーで加計呂麻へ向かいますので遅れないようにお願い致します。
               ~08:10 フェリーかけろまチケット購入  ※各自購入
          08:10~08:30 フェリー移動(古仁屋→生間港)
          08:30~09:00 徒歩移動(生間→諸鈍)    
          09:00~11:00 諸鈍探鳥会          
          11:00~12:10 徒歩移動(諸鈍→生間)    
          12:10~12:30 フェリー移動(生間港→古仁屋)
          12:30       解散(せとうち海の駅)    

・持  参  品:飲物、弁当、雨具、(双眼鏡、図鑑は、お持ちの方)持参願います

・定    員:30人まで受け付けますのでお願い致します。  


※加計呂麻島の方は、現地集合です。
※16日(日)の探鳥会は、保険加入しますので、申し込みが必要です。
※悪天候の場合は、中止となりますので、その連絡なども必要ですので、加計呂麻島で参加される方もご連絡ください。




SBI講座/お知らせ



  


Posted by S.B.I at 15:52Comments(0)奄美大島加計呂麻島自然講座

2014年02月28日

大島紬の魅力を伝えたい

皆さんは、ここ瀬戸内町にも大島紬協同組合があることをご存知ですか?

平成25年12月8日(日)
平成25年度伝統文化親子体験教室事業 「芭蕉の糸とコースターつくり」
が開催されましたが、
その会場としてお借りした施設が同組合施設でした。

今回は、瀬戸内町大島紬協同組合に所属し、
また「紬美人」として大島紬のPR活動をされている程 頌子さんによる記事です。


*****


昭和57年に設立された瀬戸内町大島紬協同組合は、2014年現在で31年を迎えました。


設立当初は、紬上昇期であり町のあちらこちらで筬音(おさおと)が響き、
春日公園の川沿いでは晴れ渡る日差しの中、
綺麗にピンと張られた紬の糸に「カシキャ」という海藻で糊付する光景があったそうです。


この「カシキャ」という海草も、今ではなかなか採れなくなっているそうです。


本組合にも、
織工場だけではなく染や締機・糊張場もあり、
大島紬最盛期には、大勢の職人達がいて、活気に満ちあふれていました。

しかし、現在は職人も少なくなり、生産反数も激減。

瀬戸内町大島紬共同組合の現在の活動状況は、
大島紬の最終工程である、織りの技術者養成所と紬のハギレや糸を使った小物製作のみとなり、
織工の数は、2014年2月現在で、指導員を含めた7名と海の駅2階に1名が在籍している状況です。

そのほかに、自宅で機を立てている現役の織工さんが数名いらっしゃいますが、
瀬戸内町では、親方や締め等の職人はいなくなり、
本組合は奄美市や龍郷町からの原料をいただいて製織の技術を学んでいます。


時代の流れと不況で職人達が離れ、ほこりまみれの機械や道具。
当時の職人さん達が書き込んだメモだけが残された工場に入ると、
誰もいない静かな場所ですが当時の想いが感じられ、何とも言えない気持ちになります。


しかし、その場所を大切に思い、今でも天気の良い暖かい日には、
物づくりを楽しみに訪れる元気な77歳の方がいます。


その方は、元々親方をされていた徳山吉治さんで、大島紬と共に生きてこられました。
全ての工程を一人で熟し、老眼鏡を使い分けながら細かい作業を楽しみ過ごされています。
紬の事を語り作業しているその表情は、今も変わらない職人パワーに溢れています。


「またこの場所を蘇らせたい・・・
 いやいやもう年だから若い人達がせんば」

とひかえめな中にも紬への情熱があります。


私は、こうしたたくさんの想いが溢れるこの場所を、
大島紬全盛期とまではいかなくても、時代の変化を受け止め、
すばらしい伝統工芸だからこそ受け継がれてきた誇れる技術、職人さん達の想いを大切にして残していきたいです。


**

さて、ここから私の紹介をさせていただきます。
私は、生まれも育ちも瀬戸内町で、瀬戸内町大島紬協同組合の事務と自宅での機織りをしています。


現在、織工3年目になる私は、とんとん筬音を奏で機の音が聞こえる毎日を過ごしています。
紬を始めたきっかけは、元々細かい作業や物作りが好きだったのと、後々、子どもの帰りを家で待てる仕事がしたいと思ったことでした。
しかし、織だけでは生活できないのが現状です。
それでも、仕事や家事育児の合間で少しずつでも織りたいと思わせる紬の魅力に私は夢中です。
島の自然に囲まれながらおばあちゃんになっても織り続けていきたいと思っています。


そんな私が、初めて紬に触れたのは、成人式を迎える目前の夏。
その頃、島を離れ大阪で学生生活を送っていた私は、夏休みで帰省していました。
母に連れられ、成人式で着る紬を見に行った事を思い出します。
一人娘の私の為に、両親が紬貯金をしていてくれた事を知り、成人を迎える晴れやかな気持ちと親のありがたさで胸いっぱいでした。
様々な紬を手に取り選び抜いた紬は、私の宝物の一つとなっています。
その大切な紬は、私の振袖となり、その余りの布はまた、私の娘の七五三の着物となりました。
そして今も、親子お揃いでイベントや初詣に出掛け活躍しています。



現在の紬のデザインは、柄にしても色にしても様々なものがありますが、
私は大島紬のシックで粋な柄が大好きです。

そして、年齢を問わずに長く着ることができることも紬の魅力の一つだと感じています。


では、実際に織工を始めてから感じた大島紬の魅力を伝えたいと思います。

私は、織り始める前、機織りは、カタカタ足を踏みかえてトントン糸を織り込んでいくだけだと思っていました。

ところが、織るためには、経(た)てに張られた糸を、一本一本順番に並べ、

ホヤと呼ばれる輪と輪の間を通し、筬歯の狭い隙間を確認しながら、
千本以上もある糸をセットしていくところからの始まりでした。
目がゆがむような果てしない作業と一本でも間違えてはいけない緊張の連続です。

たくさんの作業があったことを目の当たりにした私は、衝撃を受けました。

自分の持っている紬もこのようにして出来上がった事を知り、
もっと大切にしないといけないと改めて感じました。

織りだけでも沢山の細かい作業の連続ですが、
紬が出来上がるまでには何十種類もの工程があり、
その工程ひとつとってみても、根気のいる果てしない作業が繰り返されています。

ひとつの作業を伝えるだけでも大変ですが、
その全ての工程を1300年にも渡り変化を遂げながらも受け継がれている紬の歴史は感動の一言です。
私は、そんな大島紬の歴史に少しでも関わっているのかな~とワクワクしながら織りを楽しんでいます。



職人さん達の沢山の想いが繋がり仕上げられた大島紬は、また身に着ける人達の素敵な思い出を彩り、
良いものであるからこそ、親から子、子から孫へと受け継がれ沢山の人たちの想いの詰まった大切なものであることに間違いありません。

奄美には、守り継いでいくべき素敵な文化と豊かな自然があります。
その宝の一つである大島紬を私は、誇りに思います。
これから、大島紬を通じて沢山の人たちにその魅力を伝え繋げていきたいと思っています。




2014.2.18 瀬戸内町 瀬戸内町大島紬協同組合
調査員 程 頌子  


Posted by S.B.I at 16:34Comments(0)奄美大島産業伝承

2014年02月01日

奄美の正月料理 「三献」 

平成26年1月31日(金)は、旧暦の一月一日でした。
昔は、旧暦で祝っていた正月も、今では、新暦でお祝いしていますね。

皆さんは、今年のお正月、どのようにお過ごしになりましたか?

シマに帰省して、久しぶりに友人や家族と過ごされた方もいらっしゃったのではないでしょうか?


帰省する楽しみの一つは、やっぱり 「我が家の味」
中でも、お正月にいただく料理はいかがだったでしょうか?

本土のお正月料理といえば 「お雑煮」 や 「お節料理」 が浮かびますね。
シマでは、 「三献」 と言われる料理が、お正月料理として食されています。

「三献」とは、一の膳、二の膳、三の膳からなるお祝いの席で提供される料理のこと。
または、その飲食形式をさす言葉でもあります。
現在は、主にお正月に食べられる料理となっているようです。



奄美大島でも地域によって異なりますが、 「三献」 で提供される料理は以下のようです。

「一の膳」 吸物(餅吸物:餅、海老や蒲鉾、野菜等が入る)
「二の膳」 刺身
「三の膳」 吸物(餅無吸物:豚、魚、鶏、海老、蒲鉾、野菜等が入る)

そして 「三献」 の特徴のひとつ。
それは “膳を食べ終える毎に一献、合計三献のお酒をいただく” ことのようです。

また、一の膳の前に、塩、さきいか、昆布からなる 「シュームリ(塩盛)」 をいただいたり、
三の膳を食べ終わった後、 「ヒムン(干物)」 と呼ばれる焼き魚をいただいたり、
「三献」 が終わった後に、大晦日に食べる 「豚骨」 や本土のような お節料理 をいただく家庭も。
各家庭、各シマでいろいろな 「三献」 の料理があるようです。



『南島雑話』(幕末の奄美大島の生産・民俗・年中行事、動植物などを記録した資料)では、
「三献」で提供される献立に
  「雑煮、吸い物、刺身(二切)、豚汁、硯蓋、丼、多台、焼酎」
などがあると記されています。

現代の「三献」料理の献立に通ずる物もありますね。



昨年、瀬戸内町文化遺産活用実行委員会では、メールやFacebookで、
皆さんの家庭で食べられている 「三献」 の写真投稿をお願いしました。
「お宅の三献教えてください!」

皆さんから送っていただいた大切なデータ。
今回、やっと記事にすることができました!

データを送っていただいたのは、奄美大島にお住まいの20家族。
調査にご協力いただき、本当にありがとうございました。




それでは、皆さんの 「三献」 料理をご覧ください。

瀬戸内町
【O家】
瀬・O家(勝浦)1
このお宅ではお酒をお屠蘇セットでいただいていますね。


瀬・O家(勝浦)2
餅の入った吸物をシマでは 「ムチズイムン(餅吸物)」 といいます。

瀬・O家(勝浦)3
お刺身にタコも良く見かけます。

瀬・O家(勝浦)4
こちらは生麩入り。
たくさんの具材が入って美味しそう。


瀬・O家(勝浦)5
「豚骨」 には厚揚げや蒟蒻なども。ハートの人参が可愛いですね。







【F家】
瀬・F家(芦瀬)1
こちらのお宅では、お膳を使用していますね。
「三献」 では、かつて一膳ずつ料理が運ばれていたそうです。


瀬・F家(芦瀬)2


瀬・F家(芦瀬)3
お刺身と吸物には 「ソージ(かんぱち)」 を使ったそうです。
昔からお正月用の魚として、 「ソージ」 は人気の魚だったようですよ。


瀬・F家(芦瀬)4
三の膳は 「ィユンシル(魚の吸物)」 ですね。







【I家】
瀬・I家(与路)1
床の間には立派なお正月用のお飾りが!
瀬戸内町では鏡餅や生け花の他に、ウディ(カブ)を飾る家庭があります。
ウディは黄色い花をつけるので、 「クガニバナ(黄金花)」 と呼ばれています。
(写真ではちょうど花の部分が切れていますね・・・)
綺麗でたくさん花をつけているものをお正月飾りとして好んで飾ります。
ウディは橙や松などとともに、縁起の良い飾りものなのです。


瀬・I家(与路)2


瀬・I家(与路)3
こちらは 「シンカン」 と呼ばれる吸物です。
「シンカン」 は蓋付陶磁器碗をさす言葉でもあるようですね。
瀬戸内町では 「シンカン」 を三の膳でいただく家庭があるようです。


瀬・I家(与路)4
「ヒムン」 と 「シュームリ」 両方をいただくようですね。
「ヒムン」 はその名の通り、かつては塩漬けの干物を食べていたようです。
現代の 「ヒムン」 は、尾頭付きの鯛が主流のようです。







【N家】
瀬・N家(芝)1
「三献」 が終わった後にいただく料理も撮影していただきました。
金柑や豆の甘露煮、地豆(ピーナッツ)や酢の物なども。
こちらのお酒は 「カラカラ」 と呼ばれる酒器でいただくようですね。


瀬・N家(芝)2


瀬・N家(芝)3


瀬・N家(芝)4
こちらのご家庭でも 「ヒムン 」と 「シュームリ」 両方を食べるそうです。


瀬・N家(芝)5
仕切りのある皿に入って出される料理を 「オードブル」 と呼んでいます。
オードブルはお祝いの席などで出される料理です。







【S家】
瀬・S家(阿多地)
「三献」 でだされる料理を一枚の写真におさめていただきました。
こちらのお宅でも三の膳に 「シンカン」 をいただくようです。







【K家】
瀬・K家(嘉鉄)1
こちらも 「三献」 の料理を一枚に。
お刺身はタコ。
吸いついて離れないのが縁起が良いとか。


瀬・K家(嘉鉄)2


瀬・K家(嘉鉄)3
「シンカン」 に入った魚が分厚くて美味しそう!


瀬・K家(嘉鉄)4
こちらでも 「三献」 が終わった後は、 「豚骨」 をいただくようですね






【M家】
瀬・M家(諸鈍)
「シンカン」 に蒟蒻やウム(里芋)が入っていますね。
昔は 「三献」 の吸物の具材に、必ずウムやコーシャ(山芋の一種)が入っていたそうですよ。







【F家】
瀬・F家(古仁屋)1
こちらのお宅では、1人ずつ 「三献」 料理が膳にのせられていました。


瀬・F家(古仁屋)2
他の写真をお見せできないのが残念ですが、こちらのお宅では 「三献」 をオモテ座敷(床の間のある部屋)でいただいていました。
家長を上座に家族がシャーマジキ(正座)をして、 「三献」 の膳を囲んでいる様子は、ちょっと昔のシマのお正月の様子を見ているようでした。







【F家】
瀬・F家(古志)1
こちらのお宅の吸物も具だくさん!


瀬・F家(古志)2
食べ応えがありそうですね。


瀬・F家(古志)3


瀬・F家(古志)4
こちらは魚、豚、鶏肉が入ったお吸物。
なんとも贅沢な一椀ですね。


瀬・F家(古志)5
おばあちゃん家の 「三献」 料理も撮影していただきました。
こちらでは 「シンカン」 を使用していますね。
おばあちゃんのお話しでは、 「シンカン」 はお客様用にお出しする吸物なんだそうですよ。







【T家】
瀬・T家(与路)1
なんとも、豪華なお正月料理の数々ですね。


瀬・T家(与路)2
奥の重箱にはコーシャが入っていますね。
赤紫色をしたコーシャの塩煮もお正月料理の重要な一品でした。


瀬・T家(与路)3
お刺身はイカのようですね。
こちらのお宅でも三の膳は 「シンカン」 ですね。







【H家】
瀬・H家(請島)1
こちらのお宅では・・・まずは 「餅吸物」 をいただきます。


瀬・H家(請島)2
そして、お刺身。


瀬・H家(請島)3
続いて、魚の吸物。
これにて 「三献」 は終わるのですが・・・。


瀬・H家(請島)4
この後に 「シンカン」 を食べるのです。
こちらのお宅では、 「三献」 が終わった後に 「シンカン」 をいただくそうです。
とても驚きました!







【H家】
瀬・H家(与路)1


瀬・H家(与路)2


瀬・H家(与路)3
こちらのお宅の 「シンカン」 はお汁無し!
「シンカン」 は 「煮物」 なんだそうですよ。


瀬・H家(与路)4
「オードブル」の品々 は本土のお節料理と似ていますね。







【M家】
瀬・M家(渡連)1
吸物の具材を撮影していただきました。
準備をされるお母さんだからこそ撮ることができた写真ですね(貴重な写真、ありがとうございました!)。


瀬・M家(渡連)2
吸物の具材は一品毎に下準備が異なります。
手間暇かけて、作られた三膳ですね。






宇検村
【U家】
宇検・U家1
「三献」 でだされる料理を一枚に。
赤うるめの唐揚げが目を引きますね。


宇検・U家2
こちらは「餅吸物」、具だくさんですね。


宇検・U家3


宇検・U家4
三の膳の吸物は豚肉に三角形の豆腐入り!


宇検・U家5
豚骨


宇検・U家6
こちらは「年取り餅」。
「年取り餅」は大晦日に豚骨と一緒に出されますが、新年にも食べるんですね。








大和村
【F家】
大和・F家
こちらのお宅では、「シュームリ」をいただくんですね。
一の膳の餅吸物は具だくさん。
三の膳は豚の吸物のようです。








龍郷町
【K家】
龍郷・K家1
「シュームリ」は床の間飾りと一緒に、置かれていますね。


龍郷・K家2
こちらのお宅の餅吸物も具だくさんですね。


龍郷・K家3


龍郷・K家4
三の膳の吸物は豚の吸物。
器は陶磁器で、瀬戸内町の「しんかん」と似ていますね。








奄美市
【T家】
奄美市名瀬・T家
こちらのお宅も餅吸物は具だくさんですね。
三の膳の吸物は鶏肉が入るそうですよ。







【M家】
奄美市笠利・M家1



奄美市笠利・M家2
結びネギがお祝いの椀にふさわしい具材ですね。


奄美市笠利・M家3


奄美市笠利・M家4
三の膳は鶏の吸物。
大根や人参も入っていて美味しそうですね。








【I家】
奄美市笠利・I家
こちらのお宅の三の膳は豚の吸物。
陶磁器碗に入っており、瀬戸内の町「しんかん」と似ていますね。








【K家】
奄美市笠利・K家1
こちらのお宅では「シュームリ」をまず最初にいただくそうです。


奄美市笠利・K家2
一の膳の餅吸物。


奄美市笠利・K家3


奄美市笠利・K家4
三の膳は鶏の吸物。
山盛り入っているのはササミ。
美味しそうですね。


奄美市笠利・K家5
こちらのお宅では「三献」が終わった後に、豚骨入りの「やさい」と呼ばれる煮物をいただくそうです。





*****


今回は、瀬戸内町13家族、宇検村1家族、大和村1家族、龍郷町1家族、奄美市4家族の 「三献」 料理をご紹介しました。
一度に20家族の「三献」料理を目にする機会は、なかなかありません!
奄美大島だけでも、「三献」料理の内容が多種多様であることを知ることできました。

各家庭ならではの習わしに沿い、続けられてきた 「三献」 という儀式。
みなさんから送っていただいた写真からは、料理を囲み集う家族の姿が見えるような気がしました。
新しい年を家族みんなで祝う。
本当に素晴らしいことだと思います。
いつまでも続いていってほしい、シマの伝統行事です。

今回、「三献」料理の調査にご協力くださった皆さん、本当にありがとうございました!




*****

〈参考文献〉
『南島雑話』



瀬戸内町・古仁屋

S.B.I 調査員  鼎さつき
2014.1.31

  


2014年01月08日

七草祝い

1月7日は「七草粥」をいただく日。

その年の無病息災を願い、春の七草から若葉のエネルギーをいただくそうです。

ここ、瀬戸内町では1月7日に「七草祝い」または「七つ祝い」を行う家庭があります。
「七草祝い」はその年の正月に数えで7歳になる男の子・女の子のお祝い。
人は7歳までは神の子で、7歳になって初めて人の子になるという信仰があり、
人の子になったお祝いを正月7日に行う通過儀礼のひとつです。
数えで7歳になった子供は、親類・縁者の家、7軒から「ナンカンドースイ(七日雑炊)」をいただきに回ります。

『瀬戸内町誌』を見ると、阿木名、嘉鉄、蘇刈集落、加計呂麻島では安脚場、渡連、秋徳、三浦集落でも
このお祝いが行われていたそうです。


今回は、瀬戸内町・嘉鉄集落にお住まいのA・Hちゃんの「七草祝い」を取材させていただきました。

Aちゃん、とっても可愛いドレス姿で登場です!
七草祝い1
Aちゃんママも数えで7歳の時に、シマ(嘉鉄集落)で七草祝いをしたそうです。その時は、着物を着たとのこと。

晴れ着を着て家々を伺うのは一緒ですね。



七草祝い2
着物姿も良いですが、Aちゃんのドレス姿、とっても似合っていて可愛かったですよ。


七日雑炊をいただく先の家には、事前に伺う旨をお知らせし、お願いするそうです。

「もうすぐ、Aちゃんは七草祝いじゃない?家にもらいにおいでね~」と声をかけていただいたお宅もあったそう。
集落の皆さん、みんなで子供の成長を祝っているんですね。


訪問先のお宅へは、自宅からお盆とお椀を持って伺います。
そして、訪問先でいただいた雑炊は、家に戻ってお鍋の中へ。
1軒ずつ回るんですね。
蒲鉾やお肉を乗せた雑炊があったり、各家庭ならではの雑炊があるようです。

シマの七日雑炊は、いわゆる春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)を用いない家庭もあります。
「7種の具を入れた雑炊」なので、中にはお肉や蒲鉾など、野菜以外の具も入っていたりするのです。
お正月料理に使った具材を取りおいて作られる場合もあるようですね。


かつて「七草祝い」では、住んでいるシマを中心に七日雑炊をいただきに行っていたようですが、
現在は他のシマに住む親戚の家にも車に乗って行くそうです。

Aちゃんも住んでいるシマから、車で20分のおばあちゃんの家や親戚のおばちゃんの家に七日雑炊をいただきに行ったとのこと。
なので、車にお鍋持参で七日雑炊をいただきに回ったそうですよ。


そして、訪問先のお宅では七日雑炊を入れたお椀とともに、お祝いもいただきます。
七草祝い4

7軒分の雑炊をいただき終わった後、近くの神社へお参りに行く家庭もあるそうです。

その後、自宅で「七草祝い」が執り行われます。
雑炊を食べた後、ヒムン(魚の塩焼き)をいただき、お酒を飲んで家族みんなで子供の成長をお祝いするそうです。
お正月に行う「三献」をする家庭もあるそうですよ。



そうそう!七日雑炊をいただきに伺ったお宅には、福が訪れるんだそうです。
七草祝い3
可愛いお子さんが届ける笑顔が、一番の「福」かもしれませんね。



1月7日にシマを歩く晴れ着姿の子供たち。
現在では、あまり見かけなくなっているようです。
今回、いろいろなご縁で、瀬戸内町の「七草祝い」を取材させていただく運びとなりました。
ご協力いただいた、Hさん、Kさん、Aちゃん。
そして、「七草祝い」のことをいろいろ教えてくださった、Oさん。
本当にありがとうございました。


子供の成長を祈り、みんなで喜ぶ。
いつまでも、続いていってほしいシマの伝統行事です。




*****

〈参考文献〉

「瀬戸内町誌(民俗編)」
「奄美生活誌」



瀬戸内町・古仁屋

S.B.I 調査員  鼎さつき
2014.1.7


  



Posted by S.B.I at 09:19Comments(0)奄美大島民俗伝承シマの風景

2013年12月31日

奄美の年末・正月準備

今日は、12月31日。
本年ももう終わってしまいますね。

年末の休みに入り、町中でも慌ただしく正月準備に追われています。
特に、お店ではシマならではの正月用品が並ぶようになってきました。

今回は、瀬戸内町で見られた、年末・正月準備風景を記録しました。


阿木名集落 「阿木名ふれあい市」さん
阿木名ふれあい市
「阿木名ふれあい市」さんは、集落の皆さんが育てた野菜などを持ち寄って販売する場所。
お店前にはお正月の門松セットや仏花セットなどが置かれていました。



店内の様子。
阿木名ふれあい市・店内
訪れた時間帯が遅かったのですが、この品揃え。
以前、朝7時過ぎにお店に行ったことがありますが、たくさんの買い物客で賑わっていました。



阿木名・金柑
正月用の金柑でしょうか。
大きくて驚きました。





続いて、古仁屋 「丸平おみやげ店」さん
丸平おみやげ店
お土産を買いにではなく・・・



お目当ては「鰹節」
丸平・鰹節
この日は生憎の雨模様のため、鰹節は店内に。
晴れた日にはお店前で鰹節の日光浴風景を見ることができますよ。



店内には椎茸も。
丸平・椎茸
綺麗にパックされ、量も大きさもちょうど良さそう。
お正月のお吸い物用に最適ですね。



これは、鰹節削りマシーン。
丸平・鰹節削りマシーン
正月前は特に忙しいそうで、この日はお孫さんがお手伝いしていました。



削られた鰹節を、わっしと掴んで袋詰め。
丸平・削り節
鰹節はグラム売りしてもらえます。
お吸い物用に、他の地産商品と一緒に贈答される方が多いそうです。





お次は、古仁屋 「魚屋さん」
魚屋さん
島の正月にお魚もかかせません。



これは、贈答用の魚。
お正月用に島外の親戚へ送られる方もいらっしゃるそう。
魚屋さん・ハージン・ソージ
写真左がソージ(カンパチ)。赤い魚はハージン(スジアラ)、奄美の最高級魚です。
お値段を聞いて、びっくり!
お正月用に奮発して購入してみるのも良いかもしれませんね。



他のお魚屋さんでは、こんなものも!
古仁屋・ヒムン
シマの正月にかかせない、「ヒムン」!!
奄美の正月料理では「三献」と呼ばれる料理を元旦にいただきます。
瀬戸内町では「三献」に、ヒムン(干物)を食する家もあります。
ヒムン用には鯛を購入される方が多いそう。
お魚屋さんで焼かれた鯛も、いいものですね。





いつもは、パンを置いてある古仁屋 「大丸パン」さん
古仁屋・大丸パン
年末の商品棚には、このようにお餅が鎮座。
鏡餅だけでなく、吸い物用の「のし餅」も売っていました。





古仁屋 「新栄青果」さん
新栄青果
こちらもお店前には、正月用の花や野菜・果物が並んでいました。



鏡餅に敷く「うらじろ」
新栄・うらじろ



「みかん」と、ざっくり紹介されています。
新栄・あかみかん ポンカン
ちょっと赤みの強いのが「あかみかん」、黄色っぽいのが「ポンカン」です。
「今年のポンカンは味が良いよ~」と、お店の方から1個おすそわけにあずかりました。
食べてみると、みずみずしくて甘かったです。
コタツのお供にいかがでしょう?



切干大根にコ―シャ(山芋の仲間)、生姜
新栄・コーシャ、切干ダイコン、生姜
こちらも、年末料理や正月料理にかかせない食材です。



お店奥では、ティバンシャ(リュウキュウツワブキ)の準備に大忙し。
新栄・つわぶき裂マシーン
お手製の「ティバンシャ・裂きマシーン?」
ティバンシャを網目状の針金に通すことで、縦に4分割になる仕組みのよう。
ティバンシャは奄美の大晦日に欠かせない「豚骨(ゥワンフゥニィ)」の食材のひとつです。



これが「ティバンシャ」

島外のツワブキと似ていますね。
でも、シマのツワブキの方が繊維とアクが強く、下処理が大変なようです。
ティバンシャを湯がく香りがしてくると、「あ~、もうお正月だな~」と感じますね。





古仁屋 「池田精肉店」さん
池田精肉店
お店前には橙やポンカン、パイナップルも。
こちらのお店のお肉は、なんと自家生産豚肉!
豚を潰す日が決まっているので、予約して購入する方もいるそうです。



これは、「塩豚」
池田精肉店・塩豚
冷蔵庫の無い時代、年末に用意された豚肉は塩漬けにして保存されました。
お店で売られている「塩豚」は3日間塩漬けにしたものだそうです。
また、「豚骨」用のお肉にはアバラ肉、三枚肉、ヘラ骨など骨付き肉が使われるそうです。



*********



奄美の大みそかに欠かせない料理「豚骨(ゥワンフゥニィ)」
豚骨。・材料
「豚骨」は、ティバンシャと塩漬けした豚の骨付き肉の煮物のことです。
これは島外でいうと、大みそかの「年越しそば」にあたる料理でしょうか。





今日は、大晦日。
豚骨
夕食が近付くにつれ、シマのあちこちで豚骨の香りが立ち昇ります。

島の年末年始を彩る食材。
シマの食を大事にすること。
それは、シマの歴史をも大切に後世につなげることでもあります。

年越しそばもいいけれど、「豚骨」もお忘れなく。


それでは、皆さん良いお年をお迎えください。




瀬戸内町・古仁屋/阿木名集落

S.B.I 調査員  鼎さつき
2013.12.31